中小企業の経営課題は、多岐に渡ります。
若手採用の苦戦・ミドル層の離職・慢性的な人手不足・マネジメント不和・従業員の高齢化・医療費の高騰・DX化の出遅れなど、何から手を付ければいいのかわからないという経営者も少なくありません。
経済産業省が推奨する健康経営をしっかりと理解し取り組むことができれば、中小企業の問題は大きく改善されます。
その1つに、就活生は昔ほど大企業を意識しておらず「従業員の健康や働き方に配慮しているか」が会社選びの重要な指標となっているからです。
※経済産業省出典:第13回健康投資WG 事務局説明資料①より
若手の採用ができ、会社へのエンゲージメントが向上し、社員の離脱が減り、マネジメント・育成の循環ができることで、新しい考え方を積極的に取り入れた風土改革・DX化も進み、売上向上や利益改善にも繋がります。
言い換えると、中小企業が健康経営をしっかり導入できればすべての問題が解消されると言っても過言ではありません。
そして経営企画や健康経営担当にリソースをさけない中小企業において、健康経営を推進する適任者は「総務」であるということをこの記事で伝えていきたいと思います。
目次
1.健康経営とは
2.健康経営への関心が高まっている背景
3.健康経営を実施する目的
4.健康経営を推進するメリット
5.健康経営推進のコツ
健康経営の推進は、総務の変革から
1.健康経営とは
健康経営とは「従業員の健康管理・健康増進の取り組みを投資と捉え、経営的な視点で戦略的に実行する新たな経営手法」です。
従業員の健康保持・増進に積極的に取り組むことにより、従業員の活力向上や生産性向上など組織の活性化をもたらし、ひいては業績向上や企業イメージ向上、採用増加へ繋げていく取り組みです。
これまで従業員の健康管理は自己責任、あるいは企業にとってコストとして考えられてきましたが、今後も続く人手不足問題などを背景に健康経営は企業の重要なテーマとなっています。
●健康経営の考え方
経営者の誰もが従業員が健康であることに異論を唱えることはないものの、朝食を取れ・禁煙をしろといった、健康づくりそのものがゴールであるように誤解されていることがあります。
健康経営は、自社の特徴を活かし「人の健康・企業の健康・社会の健康」という3つの健康を戦略的に組み立てることが求められます。
企業の未来をつくるために必要な有形・無形の力の中でも、人がもつ創造力・生産力などの大切な無形の力をいかに育てるか、人は消費されるものでなく人財としての投資対象であり、無形財産への投資を未来の企業価値に転換していけるかが重要となります。
2.健康経営への関心が高まっている背景
●深刻な人手不足
少子化により生産年齢人口が減少し、長期にわたって深刻な人手不足が続くことは避けられない問題となっています。さらに従業員の高齢化に伴い、病気等により貴重な人材が継続して働けなくなるというリスクも高まっており、人手不足が長時間労働を常態化させる原因にもなっています。
長時間労働により心身の健康を損なってしまうと、本来のパフォーマンスが発揮できず休職や退職に追い込まれてしまうこともあるかもしれません。
●保険料の高騰
高齢化による医療費の増加が企業の社会保険料負担に繋がっています。社会保険料は企業(事業主)と従業員でおおよそ1/2ずつ負担をしているため、保険料が増加する場合、企業も従業員も保険料負担が増加することになります。
不健康が原因で、保険料の増額や企業利益の圧迫を引き起こしています。
こうした社会問題を背景に、継続した企業活動には健康経営の推進が不可欠となってきています。
3.健康経営を実施する目的
●企業の社会的責任(CSR)
企業や社会に求められるのは、従業員が健康で高いパフォーマンスを発揮し、継続的にスキルアップをしながら働き続けることです。株主や市場からは投資先として、求職者からはブラック企業でない就職先として「健康経営の実施度合い」が企業を選定するための競争要因になっています。
多くの人が不安を抱えるコロナ禍において、企業は従業員の健康と働きやすさを追求することがより大切な時代になりました。従業員が健康でなければ、企業の商品・サービス品質の担保はできず、また企業は社会的に責任ある行動を取らなければ社会からの信頼は得られません。
よって、従業員の健康の追求と社会的責任を全うすることは必須項目となりCSR活動において、健康経営と社会的責任の両方を追求することが重要となってきています。
●人的資本の強化
企業の業績を客観的に評価する指標として財務指標がありますが、財務指標には企業に蓄積されたノウハウ・従業員のスキルや価値が反映されていません。真の企業価値を把握するためには人を資源ではなく資本と捉え、教育や能力などを可視化し、事業の社会的意義・成長持続性などの企業価値を高めることが、投資家たちの判断に影響を与えます。
現在の日本は就業意識の変化から人材の流動化が進んでいます。企業競争力を維持するためにも優秀な人材の確保、離職率を低下させ、従業員の安全・健康・ワークエンゲージメントの向上を目指す健康経営の取り組みは、経営リソースである人的資本の強化という点でも重要となっています。
4.健康経営を推進するメリット
●従業員のエンゲージメント向上
企業が積極的に健康経営への取り組みを行い、従業員が健康な状態であれば貢献意欲や帰属意識が向上され、仕事に対して自発的かつ積極的に取り組む従業員が増加します。
企業や経営陣への信頼も構築され、従業員エンゲージメントの向上にも繋がります。
●生産性向上
健康経営により従業員のコンディションが良くなることで、欠勤率や長期休業者の低下といったメリットが期待できます。元気のない従業員が多い会社と元気に働く従業員が多い会社とでは、生産性が高い会社は明らかに後者です。
健康な従業員が増えることは、会社にとって労働生産性が向上するメリットがあると言えます。
●企業ブランディングと採用・定着の強化
経済産業省が健康経営に取り組む優良な法人を顕彰する「健康経営優良法人」という制度があります。健康経営優良法人に認定されれば、社員の健康維持・増進を経営的な視点で戦略的に取り組んでいる法人として社会的な評価を受けることができ、取引先企業・消費者・地域社会・金融機関・投資家などからの評価に好ましい影響がもたらされる可能性があります。また認定企業であることを社内外に発信することで、求職者から評価され人材の獲得や定着に繋がります。
取引先や株主からの評価が高くなれば、将来的な株価上昇などのメリットも期待でき、社会的なブランドイメージの向上に繋がるのです。
5.健康経営推進のコツ
●社内の課題にあわせた取り組み内容にする
健康経営施策を検討するうえで、いきなり大がかりで注目を集める事例に取り組もうとするのではなく、社内の課題と合わせて設定することが大切です。
残業時間増加・若手の定着率が悪い・休職者が多いなど、状況は企業ごとに異なりますので、やみくもに取り組むよりも、課題に合わせて1つずつ取り組んでいくことが重要です。
●経営者の理解を得る
健康経営の推進が重要だと担当者が理解していても肝心の経営者がそこまで重要視していなければ、ただ仕事を増やしたにすぎず、企業として本気で従業員の健康に向き合っているかどうかは伝わります。
会社としての本気度を伝えるため、まず経営者に健康管理の重要性を理解してもらうことが重要です。
●従業員の協力を得られるようにする
経営の理解は重要なものの、プロジェクトリーダーや経営からのトップダウンで進めてしまうと、従業員のモチベーション低下や労働環境の悪化にも繋がりかねません。
まずは従業員の理解を得て協力体制をつくり、意識改革や習慣化を目標に徐々にステップアップしていくような取り組み方で継続的に進めることが健康経営を成功させるポイントです。
<取り組み事例>
・健康診断、ストレスチェック実施 ・社内外の健康相談窓口の設置 ・健康増進に関する手当、福利厚生 ・社内コミュニケーション活性化施策 ・禁煙に対する取り組み ・感染症予防対策 ・うがい、手洗い、マスク着用、咳エチケット等の一般感染対策 ・空気清浄機、加湿器の設置 ・出入口にアルコール消毒液の設置 ・在宅勤務、時差出勤の推奨 ・インフルエンザ予防接種費用の補助
これらはあくまでも一例ですが、ただ実施するのではなく目的を理解して効果を測れるようにすることが重要です。
健康経営の推進は、総務の変革から
中小企業では人手も不足している中、健康経営担当者をつける余裕がありません。ですが、そもそも健康経営担当者のような専任をつけなくても、経営から現場までを横断してつなぐ役割であるバックオフィス、なかでも総務部門が舵をとり先頭となることで全社をあげて健康経営を推進することができます。
日常業務で忙しい総務部門が健康経営の推進をするためには、総務業務の生産性を上げ、健康経営に取り組める時間をつくる必要があります。
総務業務は多岐にわたる分、長年同じやり方で実施している業務も多くあります。まずは業務の目的を明確にし、どんな業務があるのかを可視化・数値化することで、根拠をもって必要な業務・不要な業務を洗い出し、健康経営に取り組める時間を確保していくことが重要です。
会社の未来をつくる仕事こそ、総務の本来の役割です。
中小企業における健康経営の推進は「総務部門の変革」が重要なカギとなってくるでしょう。
株式会社ラフター
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